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舞台俳優ファンの観劇記録

『最遊記歌劇伝 −外伝−』初日感想と品川ステラボールのこと

すっかり秋めいて涼しい日が続いていますがいかがお過ごしですか。

私は9月に『マーク・トウェイン不思議な少年』、『最遊記歌劇伝 -外伝-』と劇場へ行っていました。

初めての『最遊記歌劇伝』、イベントを除けばSPY×FAMILYぶりの鈴木さんです。劇場への思いを入れたら5,000近くになっていました。本編は2,800字くらいです。

美しい
金蟬童子が美しい

 

予想以上の美しさ。自分でも何を言っているのかという感じですが、雰囲気からして"鈴木拡樹"ではなく"金蟬童子"で一瞬誰だかわからなくなりました。

美しいがゆえに「太陽みてぇだ」が一層キツいんですが、もうどこを見たら良いのか分からない。観客を悟空の目線に持っていくのがズルい。万感篭りすぎて本当に死んで欲しくなかった。でもあそこで消えてしまうのが美しかった。本編があるからこそ一番救いのある結末に思えるのが天才的すぎる。

 

あの長髪…ロングヘアを綺麗にさばく姿は絶対に全員に観てほしい。冒頭、上手側の装置に座ろうと体の向きを変えつつ、髪の束を前側にふわりと払って持ってくる動作があまりにも自然で、まるで普段からあの長さの髪で生活しているようでした。どうやったらそんな仕草身につくんですか?

普通に立っている時でさえ髪の先の先まで意思を持って動かしているようで、やっぱりとんでもないなと思いました。思えば髑髏城の時もロングヘアでしたが、今回は天魔王よりも気品があって上品な感じがしたような気がします。

全体的に生まれも育ちも良いがゆえに退屈している高級官僚、っていうのが滲み出ている雰囲気で李塔天のセリフにも説得力があったと思います。悟空との親子感も鈴木さんと椎名さんの信頼関係を見るようで勝手に好きでした。

態度も口も悪い金蟬童子最高です。机に両脚載っけてる写真売ってくださいお願いします。A4でも買います。

 

原作のボリュームと公演時間(脚本ってすごい)

 

正直回想も視点も多い原作をどうやってまとめるのかと思っていたのですが、冒頭で怒涛の語りでまとまっていてなるほどどいう感じでした。

確かに天蓬の軍服やら出陣やら、盛り込んでいたらいろいろと手数が増えて大変そうなところをサラッとまとめるのはそうなるよなあと思いつつ、やっぱり現場で活躍する姿も見たかった気もします。個人的に天蓬と捲簾の信頼関係が築かれるまでの過程が好きだったのでその点はもっと見たかったです。最後の夜、いつまでも作戦会議していたのが軍人同士って感じでとても好きでした…………

私が手元に持っている原作は文庫版なので、ちょうど上下巻の切り替わるくらいのタイミングで休憩に入ったのはしっくりきていました。ここから怒涛の展開だと身構えたらコメディ要素も残っていて、オリジナルの場面は賛否両論でしょうけどあれくらいの笑いどころがなければ本当に重くなるので私はちょうど良く感じています。(休憩中は髑髏城2幕の救いのなさを想像していました)アンパンマンとか映画泥棒とか、結構権利ものがガッツリ入っていて笑いました。全部「そういうもの」で済まされるのが強すぎる。

コメディ路線でいえば、悟空がひとりで遊んでいる時にけっこう自由にしていたのが印象に残りました。初対面の天蓬に飛び蹴りしたり、その場にいないはずの敖潤にボールを投げつけたり、どこからがアドリブでどこまでが既定なのか次回答え合わせをするのが楽しみ。

欲を言えば、休憩が挟まるのなら公演時間はもう少し長くなっても良いからゆっくり描いて欲しかったなと思う部分もありつつ。非常階段の金蝉が悟空を助けるところとか(これはエレベーターが省略されたから仕方ないのかも)、敖潤が捲簾を救おうとするところとか。原作を復習して行った2.5次元が初めてなせいか、ところどころ「原作を再現する」ことが前面に感じられて物語として観られなかったところもありまして。でも原作ものとしては大正解ですし……刀ステ維伝でもイベントシーンは台詞そのままの部分もありましたが、あれはむしろ隠し要素的な感じで思えたような気もしていて……なんとも言えないです。難しいんだろうな。

敖潤さん

 

原作でもかなり推しキャラなんですが、今回佐奈さんがお歌も役としても素敵でびっくりしました!

佐奈さんのお名前はもちろん存じ上げていましたが、テニミュでも入れ替わりの後の世代しか観ておらず恥ずかしながら初めましてです。でも、私が今回一番涙腺が緩みそうになったのは敖潤が金蟬たちのことを書き留めていく場面でした。お歌も下手したら一番聞き入ったかもしれません。最期は不意打ちでしたが、なんとも儚くて悲しかったです。

多分原作未習で行ったら一幕の「ここで彼らの出会いを止められていたら〜」みたいな台詞の意味がラストでわかるだと思いますが、自然に語り手の目線に移っていてそれを加味して演じてるってすごいな……と謎目線の感想を持っています。

敖潤さん、残りの人生はとにかく幸せであってほしい人No.1です。

 

ナタクと巨大物の表現

 

大型モンスターの表現はプロジェクションマッピングか幽白方式かと身構えていたらなるほどそうきたか→まさかの二段構え、で予想外でした。立体だからこそ、捲簾の姿が見えなくなった捕食のシーンがとても印象に残っています。

ずっと何が正解か分からないんですが、舞台というものすごく制約がかかる場で「巨大な何か」を表現するのに一番良い方法って何なんでしょう。ド素人の私が考えるのもおこがましいのは一旦置いといて…

映像で出すのは簡単かもしれませんが、画面の方向や立体感のクオリティを上げるなら制作費も必要になるでしょう。魔界転生の時はプロジェクションマッピングがありましたが、席によっては全く見えなかったり、明らかにずれてしまって意図はわかるけど内容が分からない……!という気持ちになりました。ステージアラウンドみたいな大型スクリーンだとしても、それまで3Dで観ていた世界が急に横スクロールのゲームになったら醒めそうな気もします。

かと言ってバーナムの森方式で人を使ってしまうと危ないでしょうし、影を作って…とするとキャストまで見えなくなって本末転倒になりそうです。テーマパークばりのリアルなものを作るには当然お金がかかりますし、たったワンシーンと考えたらおそらく現実的ではないと思います。(一応制作経験者としての意見です)

もっと映像技術やAR的なものが進化して、手ごろになったら革命が起きるんでしょうか。まだまだ開拓の余地がありそうな分野で楽しみです。

 

総括

 

念願叶ってようやく観に行けた最遊記歌劇伝、まずはこの客席に自分が座れたことが感慨深かった!

ずっと鈴木さんにとって大事な作品、大切なシリーズということは事あるごとに見聞きしていたのでひとつだけでも自分で生で観たかったんです。ファイナルになるということで、間に合えて本当にありがたい気持ちでいます。三蔵さんも最後に登場されて、少しでも御姿を拝めて非常に幸運だと思います。全く違う声音で喋っていたので驚きました!さすが推しだ!ってマインドになりましたね!!(盲目)

ビジュアルもとにかく綺麗で、グッズも作り込まれていて愛を感じました。実はまだ原作を不勉強な部分も多々ありますので、これから少しずつ読んでいこうと思います。

私が観た回は若干歌唱がスロースターターに感じたので次回は…!(厄介オタク)金蟬さんに限らず、全体的に曲の難易度が高そうだなと思いました(浅井さんの楽曲はMeseMoa.さんの舞台でも何度か拝聴しています)

とにかく最後まで、駆け抜けられますように!

 

 

 

※ここからは劇場の愚痴みたいなもので作品の感想からはほぼ外れます※

 

 

舞台装置の大型化とアクティングエリアのバランス

※どちらかというと素舞台寄りが好きな人間の個人の感想です。

※トラブル前に書いた内容です念のため

 

煉獄に笑う』の時もあった箱をぐるぐる動かす方式、別に嫌いではないんです。物語上空間の移動も多かったですし、それぞれの場所の装飾や雰囲気が変わるのも素敵だなとは思いました。

ただ今回はあまりにも舞台面に占めるスペースが大きすぎて、死角になってしまう部分とかアンサンブルの方が踊るスペースとかのほうが気になってしまいました。ただこれは大いに劇場のせいかもしれません!!

大阪公演はもっと奥行きに余裕のある会場のようなので、そちら仕様なんでしょうか?

私は上手側後列の間口より外で観劇したのですが、下手側の箱の裏が見えないのはともかくとして中央部分がけっこう見切れた印象です。奥から人が出てきて、絶対に見えなきゃいけない範囲(喋り出しくらい)にはとりあえず柱の隙間からは見えるかなくらいのこともあったのですがなんとなくモヤッとしてしまいました。これがサイド指定席だったらあまりそうも思わなかったのかもしれませんが……。感覚的にはテニミュTDCホールの見切れ席よりちょっと良かったかなくらいの感じです。というか、だったらサイド指定席はどれほどか怖いくらいです。次回はセンターブロックなので真ん中エリアに期待。

なお私は舞台袖や裏側が見えるのは大好きなので、正面からは見えないであろう出ハケが見えたのは御の字でした。ありがとうございました。

 

品川ステラボールと観劇の相性

 

長年何回も言われ尽くされていることだと思いますが、そもそも品川ステラボールは観劇と相性が悪すぎるんでしょうね……

幽遊白書の時もまあキツめの席でしたが、今回は段差のある席だったので高さの面では問題なしでした。開演後は裏動線を使わないといけない仕様もなかなか酷なのでは。見切れ席が綺麗に放射状に潰されていてなんとも言えない気持ちになりました。

奥行き7mしかない中で間口が24mって、公民館みたいな比率じゃないですか。ちなみに紀伊國屋ホールが奥行き6.0m×間口9.0m、銀河劇場が奥行き約12m弱×間口約14m、サンシャイン劇場が奥行き約8m弱×間口約13m弱です。バランス……

なお大阪公演のWWホールは奥行き約13m弱×間口約18mだそうです。

ライブならまだと思いますが、そもそも舞台の端にスピーカーがあるせいで(普通のことなのに)それより外は多分音響の聞こえ方も全然違って調整が大変そうだなと素人考えをしています。席数とか賃料とかいろいろあるとは思うのですが、せめて間口より大幅に外になる席を置かないか注釈席にしたら皆幸せになれるんじゃないでしょうか……ドリンクカウンターの辺りをグッズコーナーにしてしまうとか。開演前に引き上げるのができないから現実的ではないのは重々承知です。そんでもって装置の図面が完成してからでないと正確な見切れは確認できないのも承知の上です。舞台や公演によっては見切れがなかったというレビューもあるようなので、本当に作品によるんですかね。

 

出典の図面等はこちら↓

 紀伊國屋ホールhttps://store.kinokuniya.co.jp/theater/guide-hall/

 銀河劇場: https://www.gingeki.jp/rental

 サンシャイン劇場: https://sunshine-theatre.co.jp/rental/

 WWホール: https://cjpo.jp/theater/

 ステラボールhttps://x.com/Shiinastar/status/545177888551497728?s=20

   図面: https://www.princehotels.co.jp/shinagawa/stellarball/about.html

(公式図面に正確な数字が見当たらなかったので過去ツイお借りしました。図面で測って確認もしています)

 

長々とお付き合いいただきありがとうございました。

また前楽に違うブロックで観劇予定なので、作品として別の見え方がするところもあるんじゃないかと楽しみにしています。追記するか別記事になるかはわかりません。

皆様もよき最遊記を!

 

RedBeard