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舞台俳優ファンの観劇記録

髑髏城の七人<下弦の月>:②関八州荒武者隊のこと

 明けましておめでとうございます。下書きを繰り返していたら年を越えていました、ご無沙汰しております。
 前の更新以降クリスマス髑髏城と髑髏城納め、そして髑髏城初めをしてきましたRedBeardです。年末に続けて観たときはもうしばらくいいかなと思ったのですが、パンフレットや雑誌のインタビューを読んでいるとまた早く観たい!となるので本当に恐ろしい舞台ですね。

 今回は蘭兵衛さんは一旦お休みして、私が好きなキャラクターの一人、…五人?の関八州荒武者隊について書こうと思います。例のごとくネタバレしかありませんので避けたい方はご注意ください。

 それでは大丈夫な方はどうぞ!






 まず、関八州荒武者隊は見ていて気持ちがいい( 'u' )笑
 みんなそれぞれ笑顔がきれいで、本当に人生を兵庫と一緒に楽しんでいて、毎日笑って過ごしてるんだろうなって心地よい気持ちになる笑顔。彼らがいてくれることで重い話が一気に明るくなる気がします。

 最初の髑髏党との邂逅からの渡京にガン飛ばす→兵庫に餌付けされる流れがコメディでしかなくて。「ごはんをあげよう」だったのは初日かな?ごほうびじゃない日が1回あったような気がする。毎回鳥の雛みたいだな~と思って観ています。みんな自分の扱いとしてあれでいいのかな?笑

 荒くれ者と言うわりには中身がピュアで、兵庫の慕い方もそうですし「応援してくださいねー!」からの流れも兵庫含めた全員が眩しかったです。無界の掟説明のときもですけどぴゅあっぴゅあか…ほんっとまっすぐで純粋で陽のキャラクターですよね。たとえるなら太陽みたいな人たちだと思います。近くにいたら毎日楽しくなりそう。

 彼らのダンスシーン、というか見回り隊ナンバー?だけ見たらこの5人アイドルみたいだなとかアホなことを考えてしまいました。すっごくキラキラしているし衣装も個性が出ているし、歌って踊れてフォーメーションもきれい!あのまま平和だったら、関東一の色街にはイケメン男子の見回り隊がついてるって評判になった可能性もあったんじゃないかなあとか(笑)

 時に黄平次役の小池亮介さん、パンフレットで「本番の日に青海と青梅を間違えたことがあります」………あれ!?と思って武士ロックのDVDを見たら、かつてのヒデリン・加藤清正役の方だったんですね!!まさかこんな形で巡り会うとは思っていなかったので嬉しい驚きでした!!!かつての蘭丸 / 吉良上野介とヒデリン / 加藤清正が殺し殺され…戦国鍋とは真逆の殺伐展開。25日狸穴を見ていてももゴタが脳裏をよぎったのは偶然ではなかった…?

 無界屋ではつい兵庫と太夫に目がいってしまうけれど、よく見ると他の女の子達と荒武者隊のペアもできていてとってもほっこり幸せになります。いつの間にこんなに仲良くなってたんですか!?どうやら無界の里で遊んだことがなさそうな彼らがどうして借金を作るに至ったのかとかその辺りも気になりますが、物語が始まる前から知り合いだったのが対秀吉・髑髏党でまとまって客と店という立場の境もなくなったのが大きいんでしょうか。青吉くんが女の子に一緒に踊ろ!って声かけられてよっしゃ〜〜!!ってガッツポーズしてたの本当に可愛かったです。この里本当に楽しかったんだろうなって…襲撃前は( ´°ω°) 

 わりと好きなキャラクターたちだっただけに全滅したのが悲しくて、2回目からは最初に無界の里に行ったときも楽しそうな様子に惨劇が思われて涙腺が緩んだし見回りダンスはこの子たちあと数分で死ぬんだ…と涙が出ました。終わりを知らないってリアルだし哀しい。赤蔵くんはもうちょっと滑舌が滑らかだとなおいいかな!!ちょっっと見回り完了しました!の前後が聞きにくくて…それ以外は全体的にダンスも歌もすっごく楽しかったです。
 
 弱きもの、ひいては無界の里を守ろうとして死んでいった彼らですが、観返すと「無界の里は俺たちが守る!」「「「「「おう!!!」」」」」とか「俺たちは兵庫の兄貴とずっと一緒だ!!」とか、ひたすらその最期が思われて苦しいです。死ぬときは兵庫とばらばらだったけど、信念だけは曲げないで兵庫を想いながら必死に闘って死んでいったのがなんとも…。

 おきりが焙烙玉を構えて蘭丸に向かって行ったとき、後ろで倒れている(恐らく)白介が腕だけを動かしてやめろ、やめろと止めようとしていたのが印象的でした。彼だってもうろくに動けないのに、それでも守ろうとしていたんだなと。襲撃の場面はどうしても天蘭に目が行きがちだったのですが、これからはそれぞれの荒武者隊や女の子たちにも注意していこうと思います。みんな突然のことに混乱しながらも必死に抗おうとする姿、蹂躙される弱きものって感じがしてもどかしいやら愛おしいやら…。

 関八州荒武者隊の5人(と兵庫)は、今までちょっとした小競り合いこそあっても実際に命のやり取りをするような場は経験していなかったんじゃないかなと思います。良くも悪くも田舎で今までの戦からは程遠く、あっても住民同士の喧嘩の仲裁や小悪党をやっつける程度だったのではないかと。だからこそ黄平次が射られたことに対しても仲間の心配が先に立って、そのあとに射った張本人が来るであろうことには思考が及んでいない感じがして。実際に蘭丸が現れても状況を理解できずにいたように思います。

 もちろん彼らからすれば自分たちが襲われる意味がわからないし、増してつい先日まで自分たちをもてなしてくれていたはずの人間がそんなことをするわけがないというある意味での甘え、蘭兵衛の過去を知らないからこその油断もあったでしょう。無界の女たちは蘭兵衛だとわかっていても”無界に害を成した存在”と認識するや銃を構えていたので、そこに今までの戦いの経験差が出ていたのではないでしょうか。


 荒武者隊の死に様を考えるうち、以前シェイクスピアか何かの作品を扱った講義で聞いた、「与えられた役割から外れたキャラクターはそれ以上生きられない」というのを思い出しました。荒武者隊はあくまでコメディアンの役割を担っていて、見回りまではその役目を立派に果たしていたのにいん平とのやり取りでシリアスな雰囲気を醸し出してしまった。その直後、コメディに戻ろうとしたところで黄平次が殺されます。そこから全員が死ぬまではあっという間ですよね。

 そして荒武者隊を起爆剤としてコメディ面を担っていた兵庫は、以後笑いの方向よりも太夫・蘭兵衛との関係性に軸を移していくように見えます。荒武者隊の観客を笑わせる位置には襲撃後一行に合流する贋鉄斎が入り、起爆剤の役目も(いつも心に花束をや刀への土下座を含め)同時に担う一方で兵庫との絆はいん平が引き継いだとも言えると思います。荒武者隊から2人へそれぞれの役割がスライドしたことで彼らの穴が完全に塞がっていると気づいたときはさすがに寒気がしました。メタ視点ではありますがこの計算が少し怖い。合理的だし話を進めるためには仕方ないことなんですけれども。

 荒武者隊が殺されるのは無界の蹂躙や侍↔︎百姓の対比を際立たせるためだけでなく、兵庫と太夫の両方を結びつける「自分以外全員が死んでしまった」という事実も作るためだったのかなあ…霧丸、兵庫、太夫の3人全員が今までの仲間が自分を残して死んでしまって、最後は捨之介もかつて共に仕えた2人を目の前で喪うという。渡京を荒武者隊の一員として数えればその限りではありませんが…

 少し横にそれますが、だからこそこの3人+捨之介にはどこか共通する思いがあるように感じていて、霧丸の「地面這いつくばってでも生き延びろよ!」も太夫の「あんたは、あんただけでも、生きなきゃ」も天蘭がいなくなってしまった捨への台詞に聞こえました。特に太夫の言い直しには、天魔王と蘭兵衛が捨之介にとっては単なる敵ではなく、この先も一緒に生きたかった仲間だったんだと理解しているのが滲んでいる気がしてじんときた言葉でした…。


 兵庫との関係という面から荒武者隊を考えてみると、彼らの出会いや集まってきた経緯がまず気になります。太夫のセリフに「ここでは身分の違いは関係ない/侍も百姓も関係ない」というものがありますが、この「百姓」の時兵庫だけでなく全員が顔を背けるのが引っかかりました。いん平には「おめぇら侍が持ち上げっから」と言われてはいますが、もしかすると荒武者隊は全員が兵庫と同じ百姓の出なのでしょうか?だとしたら彼らが兵庫に憧れるのも、夢を見るのも納得がいく気がします。黒平くん「俺らにとってもおっとうと同じだ!」がちょっと百姓っぽいな〜と思っていたのですが12月の最後あたりに観たときからは父親に変わっていたので少し寂しい。

 もっとも、作品の舞台となっている戦国時代(正確に言えば安土・桃山時代になるのでしょうか)にはまだ士農工商身分制度はありませんから、侍はもっと広い意味があったのかもしれません。作中敵方となる豊臣秀吉も百姓から天下人まで成り上がった人物ですし私の侍・百姓の身分差イメージが強すぎる可能性が高いですが!!

 どちらにせよ、傾奇者として弱きを助け強きを挫くを座右の銘として有言実行していく兵庫たちは人間的に大きな魅力がありました。無界の者たちも口では借金が〜とか言いつつも好ましい人物だと認めていましたし、共闘の相手として受け入れるくらい信頼も置いていたと思います。まっすぐで嘘がなくて、裏表のない彼らの存在が、故郷を焼かれ流れ着いた彼女たちが関東を気に入った要因の一つでもあったらいいな。

 さてさて、まとまりがない文章になってしまいましたが、少しでも関八州荒武者隊の良いところが伝わっていたらなと思います。ぜひ次回観劇される方は後ろでわちゃわちゃっとしている5人にも注目してみていただけたらなと!メインで喋るところは少ないですが、その分周りが話している時に集まってなにやらじゃれあっていたりしていて本当に微笑ましく可愛いです。最初に髑髏党に囲まれたときもアニキ〜〜!ってちょっと情けないような声を出しつつ渡京にやったれやったれ!って感じだったり、渡京が長いものには巻かれろと言っている横でうんうんと頷いていたりそれでいいの!?みたいなところも楽しいです。メタですが襲撃後の髑髏党・徳川軍の中の荒武者隊を探せ!もなかなか難易度高くてやりがいが…^-^

 次回は8日、成人の日のマチネに伺おうと思っています。また新たな彼らがたくさん観られたらなと思います!
 それではここまで読んでくださりありがとうございました!本年もどうぞ宜しくお願い致します。


RedBeard