Run, Run, Run and Run

舞台俳優のいちファンの観劇記録ブログ

「YES!ロリータ NO!タッチ」の世界が予想外の純愛だった話

 ナイスストーカー『ロリコンのすべて』(再演)を観てきました。その感想です。

 タイトルと劇団名のインパクトはすごいんですけどちゃんとした演目です。(笑)(失礼)

 ザ・スズナリ、客席は満員で当日券を待っている方も10人近くいらっしゃったかなと思います。私が行った公演は次の本公演のパイロット版がついてたのもあったのかな?

 SNSを見ていても結構売り切れの日が出ていたようで、なんか客席の熱気も強かった感じがしました。ネットの反響のほか、『えんぶ』にも複数回取り上げられていたり2015年の初演が佐藤佐吉演劇賞という賞で6部門も受賞していたり、なんかすごいみたいです。公式サイトにナタリーetc WEBメディアも含めた掲載情報が載っていたのでURL貼っておきますね。

nice-stalker.com

 あと、コミケでロリコインを配ったっていう積極的すぎる宣伝の発想に脱帽でした。なんというかマーケティング力がすごくないですか!?

 

 撮影可能だったので終演後に舞台装置の写真を撮ってきました ↓
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 ナイスストーカーさんは以前『1999の恋人』という演目を一度だけ観に行ったのですが、個人的には『ロリコンのすべて』のほうがより好きかも!前回も物語のキーアイテム・携帯電話を模した枠が印象的でしたが、今回も作中で重要な役割を果たすカメラを彷彿とさせる枠がありました。フォーカスのマークかな?

 色合いもほんわかポップで小学生的なのに綺麗で、バランスが好きです。背景の巨大な本もなんかファンタジック。ドイツ語っぽかったんですが私にはLolita以外の単語は解読できませんでした、残念。

 

 さて肝心の本編ですが、衝撃的なタイトルと裏腹に2度泣かされました。いや、まさかと思う人にはDVDでも良いからぜひ一度観てみてほしいです。ほんとなので。以下軽度(?)にネタバレを含むので畳みます!

 

 

 

 物語の本筋はある教師に恋をする一途な少女と少女に惹かれながら理性を盾に想いを封印する教師の葛藤と告白、なのですが、その8年間に絡んでくるサブカップルの帯金さんがすごくいい。サブ主人公的な義雄くんは中高6年間ずっと少女=白勢さんが好きだったんですが、帯金さん(ゆかりちゃん)は小学生のときから彼一筋でした。で、いろいろあって二人が付き合うことになった瞬間がもう本当によかった。義雄くんに飛びつくゆかりちゃんがほんっとうに嬉しそうなのにちょっと泣いてるように思えて、彼女の今までの頑張りと我慢と健気さを思うと涙が出てました。

 ゆかりちゃんはずっと義雄くんが白勢さんを好きなことを知っていて、それでも諦めずにアタックし続けて時には慰めて元気付けて支えてあげてというあまりにも健気すぎるキャラでした。白勢さんと義雄くんが一緒にいて動揺する先生とは対照的に、ゆかりさんは本当に高校生?と思うほど落ち着いていて、先生の背中を押しつつ義雄くんを待ちつつで自分の気持ちを押し付けない心の真っ直ぐなすごくいい子。私と付き合っちゃえばいいんだよ、というセリフはおちゃらけているようだけど一世一代の大勝負の緊張感があって、どうか成功してくれと私まで願わずにはいられないものがありました。フィクションだけど、2人には幸せになってほしい。

 義雄くんは義雄くんで白勢さんにぞっこん(死語)だけど最終的にゆかりちゃん大好きマンになってたし、とにかくまっすぐで純粋なところが好きです。もう白勢さんへの未練もないし、自分の無実を証明するための行動力もあるし、何より家族を幸せにするぞという前向きな明るさがある。これだけハッピーが溢れている人がいますか。平凡かもしれないけど周囲から愛される人なんだろうなあという印象でした。ほんと、3人とも幸せになって!!!なんだかすごくいい家族になりそう。

 

 この人を幸せにしなければ、という相手がいるという点では先生も同じでした。最初はこのセリフは自分に言い聞かせてるのか?とも思いましたが、ラストは本当にこのままこの2人は一緒に歩いていけるんだろうなと安心する終わり方でした。こちらのカップルも本当に幸せになって明るい未来を生きてほしい。先生は確かに修羅場をくぐって辛い思いも沢山したかもしれないけれど、それを乗り越えて出会った彼女は彼にとっても救いだったのかもしれないなあとか。うろ覚えですが最後のほうの台詞の中の「愚かで愛しい」という単語は心の底から彼女をいとしく思っているのを感じられてじーんときました。出会えてよかったね…。

 白勢さんもきっとどこかで幸せに暮らしているんでしょうね。待って待って待ち続けて、それで結局あんな最後になったけど、ああやってはっきり踏ん切りをつけられたのは2人のためにもよかったんじゃないかな。白勢さんが失恋して泣いてるのが悲しくて悲しくてもう1つの泣き所はここでした。罵倒しても抱きついてしまうのが哀しくて仕方ない。大好き、も本当胸が痛かったです。いろいろぶっ飛んだ行動もしていましたが、彼女の気持ちも純愛だったんだと思わされました。どんなに好きでもきっぱり別れを告げられる強さがあって、芯のある立派な女の子でした。個人的な話になりますが、同じような状況になった時にもしかしたらと期待しないでハッキリ離れられる自信が私にはない。だから彼女の強さは尊敬しています。

 2人が付き合わず別れた時点ではハッピーエンドではなかったのかもしれないしご都合主義的な結末ではなかったけど、最終的に巡り巡って物語がハッピーエンドになる選択肢だったと思います。あと、すごく人間らしい。妥協でもいいじゃないか!という研究者(ホトケフチさん)の言葉が響いた結果のルートだったのかなと思うと物語への介入も悪くないですね。うん頭がこんがらがってきた。

 原作というか原案は未読なのでどのような構成なのかはわかりませんが、元々はどのような結末を迎えていたのか興味を持ちました。それこそ抄訳が欲しいけど端折っていいと思う部分は人それぞれなのが難しいですよね…

 

 研究者サイドの3人はなんというか個性の塊みたいな人たちで、唯一お嬢様/抄訳(助手?)さんだけはややマイルド…?と感じましたが"お嬢様"は劇中劇だからそこが差し引かれてマイルドに見えているだけなんでしょうか。とにかく他2人があまりにも濃かった(笑)

 お嬢様と執事のシーンはなんかもう、衝撃が強すぎてひたすら笑ってました。でもどう考えてもギャグなのに本人たちは大真面目だし、どう見てもお嬢様は真剣に執事が好きだし、気づいたら本編よりも2人を応援してしまったのはなんなんでしょう。執事、YES!NO!を徹底しすぎでは。「目の前の私より写真が大事だっていうの!?」は本編の2人のifみたいですよね……こっちはこっちでハッピーエンドになっていましたけど。すっごくメルヘン。割と好きです。

 で、この3人がいわばメタ世界からのフィクション世界に飛び込んでしまうのがとっても予想外でした。というかメタ世界だったのかという驚きで一瞬頭が飛びました。あの、例えるなら世界を箱として、結局のところ同じ箱の中身だと思っていたものが実は入れ子構造だったみたいな。我ながら図解じゃないとすっごく分かりづらいですね。それでもってその外側の箱と内側の箱が同化してしまうから、ますます混沌として物語が混在してしまって。すっごくオーロラソース化してました(?)

 ここで一つ疑問なんですが、研究者さんはあくまで研究発表の一環として役者陣にフィクションを演じることを依頼しているわけですよね。なぜわざわざその中に<役者が演じる登場人物に対してフィクション世界であることを告知する>という演出を入れたんでしょうか。もしかすると劇中で解説があったかもしれないのですが、聞き逃してここだけが不明なままです…。

 兎に角、ここで劇中世界の構造が明らかになったことで坂倉先生の語りの意味がようやく腑に落ちました。陪審員の皆様というのが一体誰を指しているのか、もしかすると語り手がそういう体で書いているのか?とも考えていたのですが、彼はそのまま第四の壁を越えて観客である私たち自身に話しかけていたんですね。再現コントと作中現実の交差、時間軸の入れ替わり、そして2つの入れ子構造の一体化など、この作品は観客目線の使い方がうまいなあと感じました。視線の誘導ではなく、観客側がどんなふうに見て考えるのかを分かった上でそれを利用しているというか…。ちょっと手のひらで転がされてるようで楽しかったです。

 

 全編を通してテンポよく、相当笑って時々しんみり泣いて、とても楽しい舞台でした!再演が望まれたのもわかる気がする。けっこう時間軸や世界線の異なる内容が交差するのに分かりやすいから置いてきぼりにならず物語に集中できるし、登場人物はみんな魅力的で幸せになってほしいと思ういい人ばかりだったし、何より『ロリコン』の皆さんの哲学が素晴らしかったです。ギリギリなワードや表現も入りつつ全く下品ではなくて、むしろ綺麗だったのはなんでだろう?笑

 上演時間があっという間に感じられるほど楽しく、素敵な舞台でした。ありがとうございました!