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舞台俳優のいちファンの観劇記録ブログ

髑髏城の七人<下弦の月>:③月が沈んで

 というわけで(前記事参照)まずは下弦の月大千秋楽の話を。割と思いつくままに書いているので場面の順番はばらばらです。

 

  2月の21日は髑髏城の七人下弦の月公演を観てきました。

 それぞれの熱量がさらに上がって、1回きりの生を全力で生き抜いている霧丸や天魔王や蘭兵衛や捨之介がいました。特に霧丸の爆発力がすごくて。誰も彼ももう絶対にやり直せない戻れない道を突き進んでいる感じが強くて初めて劇中の時間が一方通行に感じられたんです。

 蘭兵衛は二度と元には戻れないし、荒武者隊も立ち上がらないし、無界の里は焼け落ちたし、髑髏城も徳川のものになる。もう劇中のように七人が集まることもなくなって、それぞれ別々の人生をどこかで歩んでいくと思うと全く新しい物語を見ているようでした。

 私たちはたまたま何回も物語を辿っているだけで劇中の人物にとっては一回一回が唯一だと理屈ではわかっていても、やはり本当の最後というのは感じ方が違うものなんですね。大千秋楽を生で見るのは初めてだったのでかなり新鮮な感覚でした。

 

 無界屋をあとにする蘭兵衛の最後の微笑みも、万感の思いを込めたような一礼も死装束にも見える着物も全部、もう二度とここへ帰ってくることができないだろうと解っているようで。それでも大好きで大切なこの里への感謝と愛情を感じて今まで以上に切なかった。あの時点での蘭兵衛は刺し違える覚悟こそあれ天魔王の手を取るつもりはさらさらなかったと思います。それがどうしてあんなことに…

 天魔王に籠絡される蘭兵衛を止めようとした霧丸の叫びも一番びりびりきました。あそこで「蘭兵衛!」と一声叫ばれたことではっと我に帰るも時既に遅し、天魔王からはもはや逃げられなかったこの手が空を切る感じ。ここで霧丸は蘭兵衛を連れもどせなかったけれど、捨之介のことはしっかり繋ぎ留めて帰ってきたのが対比になっているのかもと思ったり。深読みしすぎでしょうか。

 最後だからこその日替わりとしては太夫の「長期休暇になるかも〜」が可愛らしくて!兵庫が「えっ!?寂しい…」と返していたのも兵庫さんらしくて好きでした。ウルトラソウルな荒武者隊には笑ってしまった。ズラ之介に始まるヅラシリーズはまさかのラストまで続いて、ヅラファニーは本当に木村さんずるいです。笑わないわけがない。もう贋鉄齋のこと食ってませんでしたかあれ?笑 廣瀬さんも「ヅラ之介だ」とか笑いながら返していてあ〜いいカンパニーだなって思いました。役者さんの仲の良さがいい方向に滲み出ている気がしてほんわかした。

 お客さんのノリもとてもよくて、場面転換での拍手も一番多かったし無界屋到着の手拍子も荒武者隊の三三七拍子もやれてとっても楽しかったです!気持ちよかった。全部舞台上の方々の熱があったからあれだけ拍手が起こったんだろうなと勝手に思っています。でも本当にどの場面も思わず拍手したくなる名残惜しさでした。

 ステアラはステアラなのでセンターブロックとはいえ見えない部分も多かったですが、そこは脳内補完で。最後ですしなるべく双眼鏡ではなく全体を見ようと考えていたのでそれはそれでちょうどいい席だったかなと思っています。中央付近はじめメインどころは全体的に見やすかったのでストレスはありませんでした。

 無界屋襲撃も久しぶりに全体を見て、女性陣の逃げ惑う姿や荒武者隊の守ろうとする姿が改めて理解できて。みんなそれぞれ必死に生きていたんだなあと当然のことを感じました。14日の公演でようやく聞き取れたおきりの最期の言葉、「蘭兵衛さん」が切なくて切なくて…戦慣れしているはずのあの子達があれだけ混乱したのは“自分たちを守り導いてくれた「無界屋蘭兵衛」だったはずの人”に襲われたからで最後まで彼に殺されることを信じられなかったように聞こえて一気に泣きました。しかも蘭丸さん、天魔王に気を取られた女の子たちの背後から斬りかかるなんてあんまりじゃないですか………21日も同じように言って斬られていたので途中から変わったのかな。

 蘭丸さんが里を去る前、天魔王の口上を聴きながら里を眺めると思うんですがその眺め方がどんどん変化しているのも興味深かったです。千秋楽は下向きにおきりの遺体を見つめる→惨状を眺める→何か(信長との記憶?)を思い出す→最後に笑うの流れでした。その前の半蔵たちへの表情も変化がありましたがラストは獰猛なほうでした…いやあ好戦的でかっこよかった。贋鉄齋への表情も冷たくなっていったし千秋楽に向けて蘭兵衛の情と蘭丸の性格みたいなもののバランスが変わっていったのかなあなどと思っています。

 同じ無界の里つながりで太夫の歌の場面ですが、おきりと狸穴っていつから上の部屋で踊っていましたか?蘭兵衛さんばかり見ていたせいかもしれませんが千秋楽まで気がつきませんでした。てっきり下から囃しているみんなにやめてくださいよう!としているままかと…それまでのやり取りもとってもほのぼのいちゃいちゃしていて、本当に平和さを感じました。あの二人はカーテンコールでもハート飛ばしまくっていてこっちが幸せな気分になります。幸せになってほしかったなあ。 

 贋鉄斎の部屋の生駒ちゃんも部下たちも、捨之介とのやり取りもどんどん自由度が増してて毎回毎回笑ってました。生駒ちゃんの刀の扱いがどんどん容赦無くなっていって、あれは毎回新しく用意しているのか直せるのか考えてしまうくらいで(笑)あんなにバッキバキに曲がるって相当な勢いでいってそうでちょっとやってみたいです。楽しそう。2幕は全体にシリアスになるのでこれが笑い納めくらいの気持ちで観ていました。

 (追記)…と思ってたけど大事なところを忘れてた!鈴木さんのボケ力は私が彼を好きなところの一つでもあるのですが、そのつもりがあるのかないのか最終日に「は〜↑いここっ↑」をぶっこんできたのはあまりにもずるいと思います。一応シリアスなシーンのはずなのに笑わないわけがない。最初の頃の「い↑いか〜?」がだいぶさらっとしていって寂しいな〜と思っていたら扇を船にしたりかと思えばここを弄ってきたりほんと天魔王がますます魅力的になっていて困りました。人間味のある天魔王様大好きです。

 天魔王と捨之介の決戦はお互いに全力をかけてぶつかっている気迫やお互いを許せない思い、一瞬たりとも気を抜けない緊張感の圧が凄かったです。千秋楽で初めて捨之介は相当天魔王に怒ってるなと思ったんです。それまでは“止める”つもりで動いていたように見えていたのに、最後の日は「天魔王はどこだ ケリつけようじゃねぇか」が完全に殺すつもりに見えてしまって。きっかけは蘭丸の死でしょうが、目の前で蘭丸を喪って怒りが理性を上回ってしまったようで。戦っているうちにその印象も薄れはしましたが最後に天魔王にとどめを刺せず手を差し伸べる部分もやや違って見えました。殺すつもりで行ったけれどやっぱりこの男も自分の大切な友人だと思い直したみたいな間というか、許せないけれど受け入れたい矛盾の認識というか。私が蘭丸(蘭兵衛)の最期でようやく捨之介を含めて見たせいかもしれませんが…。

  そのあとの髑髏城脱出も生きる気が一切感じられない感情の死んだ声が初めてで少し怖いくらいでした。あんなに感情表現豊かな捨之介が人が変わったように平坦な口ぶりになって、あれは霧丸じゃなくてもほっとけないと思います。絶対無茶をしてそのまま死ぬか無感情に徳川兵を斬り殺すとしか思えませんでした。生きろと言われた捨之介がうずくまって泣くのが子供みたいで、それまでずっとみんなの道標になっていた彼が初めてなりふり構わず自分を曝け出して弱さを見せた部分な気がします。太夫と霧丸が彼を引き戻してくれてよかった。

 家康に「無用な血は流さない そう約束できるかい」と詰め寄ったのも、亡くなった無界の人々やその他の一般人だけでなく天魔王蘭丸のことも含まれていたんじゃないかと思います。ここの捨之介も自分の命を捨てていたけど、今度は自暴自棄の死にたがりでなくここで死ねばあとの民は助かる、そしてそれを口実に自分は天蘭ひいては信長公と同じところに行けるという前向きな自殺願望に思えます。生を諦め投げ捨てているのは同じでもエネルギーの向きが違うというか。本当に未練を捨てられたのは「口で言うほど捨てるっていうのは簡単じゃねえなあ」のあとの涙でかもしれないと今思いました。あの涙は天蘭を救えなかった後悔や悲しさだけじゃなく、これでもう自分は過去を捨てて前を向いて生きていかなくちゃいけないんだという決別の寂しさもあったんじゃないかと。ここまでされたら生きざるを得ないですもん捨之介は。あくまで霧丸たちには隠して、一人で泣くのがまた捨之介らしいなと思います。

 結局空がいつから晴れ渡っていたのかはっきり確認するのを忘れてしまいましたが、本当に綺麗なオレンジ色できっとばらばらになった七人もどこかで幸せにしていると信じられるラストでした。

 

 そろそろカーテンコールの話題を。

 噂にきく煎餅撒き、私の列は赤蔵くんが配ってくれました!!なんだかとても真面目に丁寧に配ってくれて、ありがとうって思ってます。赤蔵くんのビジュアルも好きでした。荒武者隊の衣装もじっくり見たかったな〜。

 宮野さんの挨拶とか書くべきことはたくさんあるとは思うんですが、たぶん内容は他の方も書かれているかと思うので正直に鈴木さんの感想を。

 久方ぶりに見た気がする【鈴木拡樹さん】の顔で、いつもの笑顔だったり穏やかな表情だったりで頷きながらじっと宮野さんのことを見て話を聞いてらしてとても安心しました。あー鈴木さんだって感じたんですよねうまく言い表せないんですけれども。にこにこしたり宮野さんの「出会ってくれてありがとう」に応えたり、着ているものもメイクも天魔王なのに全く天魔王じゃなくて改めて凄い俳優さんだと思わされました。まとう雰囲気が完全に別物でした。

 煎餅撒きで空になった袋を安田さんが回収される際もありがとうございます的なやり取りをされていてそういうところも好きだなと…人として当然と言えば当然ですがなんとなく。自分の分は空になったのに中谷さんに差し出されて一人で延々投げ続けていたの本当に楽しかったです。肩のマントパーツすっごく邪魔そうでだけどご本人も周りの方々も楽しそうで和みました。1回かなり遠くまで飛んでいったのすごかった!直後がブーメランでしたけど!笑 本編とは変わって生駒ちゃんが天魔王の面倒を見ているようにも見えてそれもカテコならではな感じが嬉しかったです。

 そして何より最後!!帰ろうとした鈴木さん廣瀬さんを引き止めてくれた宮野さんに会場もどよめいたし私も予想外で動揺しました。三人でわちゃわちゃしながら一斉に見得を切る姿があまりにも優しい世界で、本編でもカーテンコールでも泣かなかったのに涙腺にきました。本当はあんな風に3人で笑っていて欲しかったなってどうしても思ってしまいます。捨之介はああいう未来を描いてたのかなとか。あの場面だけでもどこかに映像や写真が残っていないでしょうか…最後に特大の幸せを仕掛けられて寂しさが吹っ飛びました。ありがとうございました。

 

 改めて書くとあれはああだったんじゃないかこれはこうじゃないかと考えが尽きませんね!3ヶ月間本当に楽しくて幸せな毎日でした。髑髏城の七人に出会えてよかったです。

 まだちらほら記事は書くかと思いますが、とりあえず千秋楽の覚書はここまでで。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

RedBeard